一、楽器の紹介
古琴(こきん)は、七弦琴(しちげんきん)・瑶琴(ようきん)・玉琴(ぎょくきん)とも呼ばれる、中国最古の伝統撥弦楽器である。3000年以上の長い歴史を持ち、文人雅士が嗜む「琴棋書画」の筆頭に位置し、2003年にユネスコ無形文化遺産に登録された。遣唐使の時代に日本に伝来し、古くから貴族や文人の間で親しまれ、現在も日本国内で愛好者や演奏家が活動を続けている。古琴の本体は桐材や杉材を面板に、松や楠などの硬質木材を背板に使用し、全体が細長い楕円形を呈し、琴柱(じ)がない独特の構造が特徴である。表面には13個の「徽(き)」と呼ばれる目印があり、音程の位置を示す。弦は伝統的に絹糸で作られ、現在はナイロン弦や鋼弦も使われ、7本の弦が張られている。全長は約120センチメートル程度で、専用の琴卓に置いて演奏するのが一般的である。演奏時には左手の指で弦を押さえて音程を調整し、右手の指(爪を使う場合も多い)で弦を弾いて音を出す。右手の基本技法は「抹・挑・勾・剔」などがあり、左手はスライド・ビブラート・抑揚などの技巧で音色に深みを与える。音域は約4オクターブに及び、独特の減字譜(げんじふ)という記譜法で楽曲が伝承されている。古琴の音色は静かで深く、澄んで余韻が長いのが最大の特徴で、低音域は重厚で温かみがあり、高音域は清らかで透き通る。音量は控えめで、心を落ち着かせる叙情的な演奏に長け、大自然の風景や心境、歴史的な故事を表現するのに適している。独奏を中心に、詩の朗詠や歌の伴奏、他の民族楽器との合奏にも用いられる。現代の古琴は、伝統的な製法を守りつつ、弦の耐久性や音の安定性を高める改良が行われている。日本国内では、伝来当初の音色を再現する復元製作や、現代人の演奏しやすい仕様の改良が進められ、古典楽曲だけでなく現代的な創作曲にも対応できるようになった。
二、名曲紹介
① 高山流水(こうざんりゅうすい)
古琴を代表する最古の名曲の一つで、伯牙と子期の「知音」の故事に由来する。高山の雄大な姿と流水の悠然とした流れを描写し、琴の深い余韻と叙情性を最大限に引き出す。知己を求める心境や大自然の美しさを表現し、千年以上にわたり伝承される不朽の名曲である。
② 平沙落雁(へいさらくがん)
最も普及している古琴曲の一つで、秋の夕暮れに砂浜に舞い降りる雁の群れを描写する。ゆったりとした旋律と澄んだ音色で、静かな秋の風景と雁の鳴き声、飛ぶ姿を生き生きと表現し、心を穏やかにする癒しの音色が魅力である。
③ 梅花三弄(ばいかさんこう)
梅の花の清らかで強靭な品格を讃える名曲で、テーマとなる旋律を三度にわたり変奏する構成が特徴。寒い冬に咲く梅の姿を、清冽な音色で描写し、高潔な心境を表現する。古琴の繊細な技巧と叙情性が融合した代表的な楽曲である。
三、よくある質問
① 古琴と箏(こと)の違いは何ですか?
答え:見た目や構造、音色が大きく異なる。古琴は7弦で琴柱がなく、音色は静かで深く余韻が長いのに対し、箏は13弦や20弦が主流で琴柱があり、音色が明るく華やかである。演奏方法も異なり、古琴は琴卓に置いて指で弾き、箏は床に置いて爪義爪を使って演奏するのが一般的である。
② 古琴の弦の素材は何ですか?
答え:伝統的な古琴は絹糸で作られた絹弦を使用し、柔らかく温かみのある音色が特徴。現代では切れにくく扱いやすいナイロン弦や鋼弦が普及している。日本の演奏家の中には、古典的な音色を再現するために絹弦を好んで使う人も多い。
③ 古琴は日本でいつ伝わりましたか?
答え:遣唐使が活発だった飛鳥・奈良時代(7~8世紀)に中国から伝来した。当初は宮廷や貴族の間で演奏され、江戸時代には僧侶や文人の間で再び流行した。現在も日本各地に琴社や教室があり、演奏家が伝統を守りながら活動している。
④ 古琴の演奏には道具が必要ですか?
答え:基本的に専用の琴卓(ことたく)が必要で、弦を保護するための琴布、音合わせ用のチューナー、右手の爪を保護する爪貼りなどを使う場合が多い。伝統的な演奏では、琴を収納する琴袋や琴箱も欠かせない道具である。
⑤ 古琴の歴史と日本での発展は?
答え:古琴は中国で商周時代に誕生し、周代には7弦の形が定着した。日本には奈良時代に伝わり、正倉院にも当時の古琴が保存されている。江戸時代には中国僧の東皐心越(とうこうしんえつ)が日本に古琴を伝え、体系的な演奏法を広めた。現在は日本古琴振興会などの団体が中心となり、普及活動や演奏会を開催している。
四、関連サイト
① 香雲琴社(日本古琴教室・演奏情報):https://www.kohunkingsya.com/
② 一般社団法人日本古琴振興会(武井欲生主宰):https://www.nihon-kokin.org/
③ 大阪七絃琴館(荘不周先生公式サイト):https://www.osaka-shichigenkin.com/
④ 京都市立芸術大学 古琴研究部門:https://www.kcua.ac.jp/arc/
⑤ 古琴演奏家 武内恵美子公式サイト:https://www.takeuchi-emiko.com/
⑥ 疇祉琴社(京都古琴サークル):https://www.chushi-kinsya.com/
⑦ 日本古琴資料館(楽器・楽譜所蔵):https://www.kokin-shiryokan.jp/
⑧ 古琴名曲視聴・演奏動画(日本):https://www.kokin-movie.com/
