1、楽器の紹介
馬頭琴は蒙古語でマリンコルと呼び、弓で弦を引く蒙古族の楽器であり、琴の棹の上端に馬の頭の彫刻があるため、この名がつけられた。伝えられるところによると、12世紀にすでに蒙古族の人たちの間で使われていた。
共鳴箱は松の木で作ったもので、台の形を呈し、両面に馬の皮またはヒツジの皮が張ってあり、琴の棹は細長く、楡(にれ)の木または紫檀の木で作ったものである。琴に馬のしっぽの長い毛で作った弦が2本張ってあり、弓の弦も馬のしっぽの長い毛で作ったものであり、演奏の際、弓が2本の弦の間に挟まれないようにする。馬頭琴の発する音は低くて沈んだ雰囲気で、音量はかなり小さい。調子合わせは普通の弦引き楽器とは違い、外弦の音は低く、内弦の音は高く、多くは4度の音程で調子を合わせるのである。
馬頭琴は独奏楽器として使うほか、民謡、芸能音楽の伴奏楽器としても使われ、四胡(4弦の胡弓)などと合奏することもできる。
よく使われている演奏方法は2種類あり、一つは左手の指の第二、第三節のところで弦を押さえ、いま一つはツメで弦の下から上へと弦を突くやり方である。後者の音量は前者より大きく、清らかで明るく、音色はどっしりして力がこもっている。琴の弓と琴体とが分離しているので、ツー・トーンを弾くことができ、色彩と表現力が向上することになった。馬頭琴はソフトできめ細かな叙情的な楽曲の演奏に長じ、特に長くておおらかなメロディーの演奏に適している。民謡のために伴奏する際、往々にして3度、4度の音程のビブラートで歌手のいくつかの歌唱の特徴を真似るようにする。
改良された馬頭琴は共鳴箱を拡大し、ウワバミの皮を共鳴箱の表面を張るように改め、弓は弾力性に富むものに改め、馬のしっぽの長い毛で作った弦の代わりにビニールの糸の弦を使い、音量を大きくした。調子を合わせるために音程を4度高めた。それによって、馬頭琴の在来のソフトで、深みがあり、厚みのある音色を保つこともできれば、はっきりした、明るい、力のこもった特色も持つようになった。
2、名曲紹介
① 走るラクダ:まるでディズニーのアニメのようにデフォルメを効かせてラクダを描写しているのに対して、クダは、まさにドキュメント・フィルムのよう。鳴き声なんて、ぞっとするぐらいラクダそのものだ。
② 万馬奔腾:「万馬奔腾(万馬疾走)」さながら草原で駈ける馬の群れが出現したかのような風景を描く曲だ。
3、よくある質問
① 弦の材料は馬のしっぽ?
答え:弦の材質は元来、馬尾でしたが、現在はナイロン弦を使用する演奏者が多いようです。外弦は約120本、内弦は約80本です。
② 弓を使うか?
答え:馬頭琴は、バイオリンやチェロ、あるいは胡弓といった楽器と同じように弓を使って演奏します。そのため馬頭琴は「草原のチェロ」と形容されることもあります。
③ 馬頭琴の呼び方とは?
答え:モンゴル語でモリンホール(馬の楽器)と呼ばれており、「馬頭琴」というのは中国語での呼び方です。
昔はホール(弓を使う弦楽器)、ツォール、シャナガンホールなど色々な呼び方がありました。楽器の飾りも様々で、楽器の工場はなく、すべて手作りであったため、自分の好みに合わせて作られ、一番上に龍の頭や妖怪の頭がついていたり、また飾りがないのもありました。楽器の長さも様々でした。舞台で演奏するようになってから、モンゴル民族の一番愛する馬の頭を、楽器の一番上につけて「モリンホール」と呼ばれるようになったのです。上に飾ってある馬の頭からきた呼びかたとして、漢民族の人に「馬頭琴」と呼ばれるようになりました。
④馬頭琴の種類と演奏法は?
答え:馬頭琴は2種類に分類されます。一つは通常弾いてる楽器で五本の指を使って演奏するもの、もう一つは「ツォール」といい、親指、人差し指と薬指三本の指を使って演奏するものです。調弦方法も普通の馬頭琴と逆になります。
演奏法も2種類あります。一つは通常の演奏方法で、指五本を使って演奏する方法。もう一つはベイロロフ(駱駝のなき声)、またはヒスギルフ(風の音)演奏法と言います。これはツォールの演奏方法を使い、音が豊富で馬頭琴の独特の味が出る演奏方法です。これは内モンゴルではよく使われていますがモンゴル国ではあまり使われていません。
④ 内モンゴルとモンゴル国の区別は?
答え:内モンゴルは中国の一部であり、56の民族の中の一つ。モンゴル国は中国の領土と別で。
以下はモンゴル国の紹介:正式名称=モンゴル国、首都=ウランバドール、面積=日本の約4倍、人口=日本の約5分の1
ユーラシア大陸の内陸部にあり、南側を中国、北側をロシアに囲まれた内陸国です。ゲルという移動式住居は主にモンゴル高原に住む遊牧民が使用している伝統的な住居。男女同型の伝統的衣服はデールといいます。国土のほとんどが山で広い平野も広がり国土の2.5%はゴビ砂漠です。年間通じて乾燥していて、夏は平均摂氏20度くらいで過ごしやすいが、30度を超えるような日があったり急に寒くなったりします。
⑤ 馬頭琴の音階は?
答え:馬頭琴は二弦の楽器ですが、モンゴル人はさまざまな音階で演奏してきた伝統があります。馬頭琴を歌い手の音域に合わせて調弦するほか、ハルハ音階、チャハル音階、 ボルジギン音階 などの調弦法があります。
現在、モンゴル国で最も広く演奏されているのはハルハ音階です。 これは太弦を低いファ、 細弦をシ♭に調弦します。現在の馬頭琴奏者のほとんどがこのハルハ音階で演奏しています。 ハルハ音階は最も洗練された音階で、この音階によってモンゴルの民謡や創作曲のみならず 外国の作曲家のクラシック曲も演奏されます。ボルジギン音階はハルハ音階の反対の調弦法で、 そのため演奏法も変わります。
この音階はモンゴルの「ビエルゲー」という踊りの伴奏や「馬の駆け足」を演奏するときに適しています。チャハル音階はハルハ音階に似ていますが、ファに調弦するはずの太弦を一音下げて調弦します。この音階はおもにモンゴルの伝統的な口承文芸「ユルール(祝い歌)」、 民話、叙事詩、 伝説、「ビエルゲー」という踊りの伴奏、自然描写の演奏、創作曲演奏などに幅広く用います。
⑥ 馬頭琴はどのように生まれたのか?
答え: フフー・ナムジルという美しい青年が、東モンゴルの はずれに住んでいました。彼が兵役に就いて西モンゴルのはずれに行ったとき 、ある1人の美しい王女様と 出会いました。お互いひと目見て、あっという間に恋に落ちました。2人は楽しく時を過ごしました
いよいよフフー・ナムジルの兵役が終わり故郷に帰るとき、彼を深く愛する王女様は彼にジョノン・ハルという翼をもつ空飛ぶ駿馬を贈りました。フフー・ナムジルはこのジョノン・ハルを駆って国の東はずれから 西のはずれに飛び、毎晩愛する王女様に会うことができました 。朝にはフフー・ナムジルはまた東のはずれに戻り、馬追いをしながら帰宅しました。この空飛ぶ魔法の馬のこと は3年の間誰にも気づかれませんでした。
ところがあるとき、このフフー・ナムジルを 好きになった近所の裕福な家の意地悪な娘がフフー・ナムジルの行動を不審に思って、夜彼のあとをつけました。 するとフフー・ナムジルはなんと翼の生えた馬に乗って飛んで行くではありませんか。きっと行く先は 王女様のところに違いないと思った娘はじっと隠れて見ていました。そして、フフー・ナムジルが愛する王女様との逢瀬から帰る途中でジョノン・ ハルの汗を乾かして休んでいるところ へ娘はそっと近づきジョノン・ハルの魔法の翼を切り取ってしまったのです。死んでしまったジョノン・ハルを見てフフー・ナムジルは 悲しみに暮れました。フフー・ナムジルは空飛ぶジョノン・ハルをいつでも思い出せるようにとジョノン・ハルの 頭に似せた木の彫刻を彫り、木の棹に括りつけ、ジョノン・ハル の皮を使って共鳴箱を張り、その柔らかな尻尾の毛をまとめて 樹脂を塗って弦として楽器を作りました。それを弾くことでジョノン・ハルのいななきや 駆ける様子をなつかしんだということです。これが後に馬頭琴となった楽器の始まりなのです。
⑦ 馬頭琴の歴史?
答え:馬頭琴(モンゴル語で「モリンホール」)はモンゴルを代表する民族楽器です。この楽器は8世紀の遺跡からすでに発見されています。発生当初は「イケル」と呼ばれていました。「イケル」はモンゴル語で「イケ(母の)・ケル(言葉)」という意 味です。「元朝秘史」という歴史書にはアルグサン・チルゲンという馬頭琴奏者についての記録があります。この歴史書は 12~13世紀に書かれたといわれていますので、モンゴル人は 800~900年前から馬頭琴を演奏していたと思われます。
4、関係サイト
① 馬頭琴奏者包興安:http://www.hinggan.com/index.html
② 馬頭琴奏者ひげ:http://www.uranus.dti.ne.jp/~batoukin/
③ 馬頭琴ユニットモンガラ:http://www8.ocn.ne.jp/~kaz-bind/mongara
④ 馬頭琴奏者宝音:http://batoukin-baoin.hp.infoseek.co.jp/
⑤ 馬頭琴奏者劉国安:http://www.geocities.jp/horsehand_violin/
⑥ 馬頭琴奏者ライ・ハスロー:http://www.geocities.jp/moukofan/
⑦ 馬頭琴奏者チ・ボラグ:http://www.batoukin.com/
⑧ 馬頭琴奏者リポー:http://www.morinhuur.jp/~ripo/
⑨ 馬頭琴奏者アジナイホール:http://www.ne.jp/asahi/ajinai/homepage/index/
⑩ 馬頭琴奏者対太平:http://www7.plala.or.jp/humikun1211/china/taiping/
⑪ のど歌の会:http://www.tarbagan.net/nodo/
⑫ 馬頭琴世界:http://morinhuur.web.fc2.com/
⑬ 馬頭琴奏者ウインガ:http://www.china-art.co.jp/contents/news.htm#
⑭ 馬頭琴曲視聴:http://www.guqu.net/musicsort/223_1.htm
⑮ 民族楽器独奏総合視聴版:http://list.mp3.baidu.com/list/minyue.html